「もっと早く就職した方がいいのではありませんか?」
利用を検討されるご本人やご家族から、このようなご質問をいただくことがあります。
そのお気持ちは、とてもよく分かります。
働くことは大切です。
経済的に自立することも大切です。
社会とのつながりを持つことも大切です。
私自身、長年にわたり障害者雇用や就労支援に携わってきました。
障害のある方を採用する企業を支援し、働くご本人を支援し、就職後の定着支援にも数多く関わってきました。
だからこそ、就職の大切さは多少なりとも理解しているつもりです。
もちろん、働く中でしか学べないこともたくさんあります。
仕事の責任感。
時間を守ること。
人間関係。
社会人としての礼儀やマナー。
お客様から信頼されるということ。
これらは実際に働くからこそ身につくものです。
だから私は、就職を否定しているわけではありません。
むしろ、一日でも長く、自分らしく働き続けられる人生を歩んでほしいと心から願っています。
だからこそ、私はいつもこうお答えします。
「私は、2年間という時間でも短いと思っています。」
この言葉に驚かれる方は少なくありません。
「2年間もある」のではありません。
私にとっては、「2年間しかない」のです。

私が気づいた、本当の課題
アステージカレッジを立ち上げる前、私は障害者雇用や就労支援を専門に行っていました。
企業の立場にも立ち、ご本人の立場にも立ち、数多くの就職と、その後の職場定着を支援してきました。
その中で、一つのことに気づきました。
それは、
働けないのではなく、働き続けることが難しい。
という現実です。
もちろん、仕事内容が合わなかったケースもあります。
職場環境が合わなかったケースもあります。
人間関係に悩んだ方もいます。
しかし、それだけではありませんでした。
もっと根本的なところに課題があることに気づいたのです。
「働く準備」ができていないまま社会へ出てしまう
多くの方は、自分自身を十分に理解できないまま社会へ出ています。
自分は何が得意なのか。
何が苦手なのか。
どんな時にストレスを感じるのか。
どんな考え方の癖があるのか。
何を大切にして生きていきたいのか。
それを知らないまま働き始める。
だから、うまくいかない時に原因が分からない。
同じことを繰り返してしまう。
そして、
「やっぱり自分はダメなんだ。」
そう思い込み、自信を失ってしまうのです。
私は、そんな姿を何度も見てきました。

就職する前に育てたい力があります
私は、利用者さんを見ていて思うことがあります。
就職する力より前に、育てておきたい力があります。
自分の考えを持つこと。
自分で選択すること。
人の意見やアドバイスを素直に受け止めること。
自分の考え方の癖を知ること。
困った時に助けを求めること。
応援される人になろうと努力すること。
社会人としての基本的なマナーを身につけること。
仲間の存在に感謝できること。
仲間と切磋琢磨する喜びを知ること。
誰かの成功を心から喜べること。
誰かの苦しみを、自分ごとのように受け止められること。
そして、自分の想いを、自分の言葉で伝えられること。
私は、これらの力こそ、人生を支える土台だと思っています。
就職してから身につけるものではなく、就職する前に少しずつ育てていくものだと考えています。

アステージで学ぶのは「働き方」ではなく「生き方」です
アステージカレッジでは、
「社会に学ぶ、社会の中で学ぶ、社会の一員として学ぶ」
という理念を掲げています。
教室の中だけでは学べないことがあります。
企業LIVE学習会では、働く人の姿から学びます。
社長のかばん持ち体験では、経営者の覚悟や責任を肌で感じます。
ゲストスピーカーからは、人生の失敗や挑戦、苦しみや喜びを学びます。
仲間と語り合い、ぶつかり合い、支え合う中で、自分自身を知っていきます。
私は、これらすべてが教育だと思っています。
知識だけでは、人は変わりません。
人は、人との出会いの中で変わっていくのです。
急がないことは、遠回りではありません
「もっと早く就職した方がいい。」
その気持ちは分かります。
でも、私は何度も見てきました。
準備が整わないまま社会へ出て、自信を失ってしまう人を。
一度失った自信を取り戻すことは、簡単ではありません。
だから私は、焦りません。
本人の歩幅を大切にしたいと思っています。
制度上、自立訓練(生活訓練)の利用期間は原則2年間です。
必要性が認められた場合には、さらに1年間利用を延長できることもあります。
私たちは、「2年で卒業させる」ことを目標にはしていません。
一人ひとりが、自分らしく次の一歩を踏み出せる状態になること。
それが一番大切だと思っています。
私が本当に願っていること
私は、利用者さんによくこんなお話をします。
「過去がどうであれ、今がどうであれ、明日の自分を創ることが大事。」
そして、もう一つ。
「過去の自分に縛られず、今の自分にこだわらず、明日の自分へ。明日のステージへ。それが、ASTAGEです。」
この言葉は、私自身が大切にしている信念でもあります。

2年間は、一生の財産になる
もし今、このブログを読んでくださっているご本人やご家族が、
「少しでも早く就職しなければ。」
そんな焦りを抱えておられるなら、どうか一度立ち止まって考えてみてください。
本当に急ぐべきなのは、就職でしょうか。
それとも、これから何十年も続く人生を支える土台を育てることでしょうか。
私は、後者だと思っています。
就職は人生のゴールではありません。
人生のスタートラインの一つです。
だから私は、就職する人を育てたいのではありません。
人生を、自分らしく歩んでいける人を育てたい。
そのために、アステージカレッジがあります。
そして、これから先、就職という道を選んでも、進学という道を選んでも、就労継続支援や就労移行支援など、どのような進路を選んだとしても、私は自信を持って言えることがあります。
アステージで過ごした2年間は、必ず人生の大きな財産になります。
なぜなら、この2年間で身につけるのは、知識や技術だけではないからです。
自分を理解する力。
人を信じる力。
助けを求める力。
仲間と支え合う力。
そして、自分らしく生きる力。
これらは、どんな進路を選んだとしても、一生あなたを支え続けてくれる力になります。
アステージで過ごす2年間は、就職するための2年間ではありません。
人生を、自分の手に取り戻す2年間なのです。

