何度も卒業式を経験してきました。
それでも、今回ほど涙があふれた卒業式はありませんでした。
先日、アステージカレッジでは、2年間の学びを終えた利用者さんの「卒業式プログラム」を開催しました。
卒業式は、卒業生が「アステージに来る前の自分」「2年間で変わったこと」「仲間や支えてくださった方々への感謝」、そして「これからの決意」を、自分の言葉で語る特別な時間です。
その姿を見守るために、現利用者の皆さん、卒業生(OB・OG)、実習や企業LIVE学習会でお世話になった企業の皆さま、ゲストスピーカーの皆さまなど、多くの方々が駆けつけてくださいました。
毎回この日を迎えるたびに、私は思います。
卒業はゴールではありません。
私たちが目指しているのは、就職することでも、福祉サービスを卒業することでもありません。
「自分らしく生きる力」を取り戻し、自分の人生を歩み始めること。
その第一歩が、この卒業式なのです。
今回卒業を迎えたAさんも、その一人でした。
面接で感じた「この人は人生を変えたい」という想い
今でも、初めてAさんとお会いした日のことを鮮明に覚えています。
笑顔をつくろうとしていました。
でも、その笑顔はどこかぎこちなく、無理をしているようにも見えました。
Aさんは、大手企業で約10年間働かれていましたが、人間関係をきっかけにうつ病を発症し、休職、そして退職。
療養を続けても思うように回復せず、「まずはアルバイトから始めよう」と勇気を振り絞って応募された先が、アステージカレッジでした。
私たちは面接で、Aさんにこうお伝えしました。
「今のAさんに必要なのは、働くことを急ぐことではありません。まずは、自分自身と向き合う時間です。もし私たちが支援をするなら、長い目で見て、その時間を一緒に大切にしたいと思っています。」
その言葉を聞いたAさんは、その場で利用を決意されました。
あの時の表情を思い返すと、「藁にもすがる思い」という言葉がぴったりです。
長い間、出口の見えない砂漠を歩き続け、ようやく水脈を見つけた人のような眼差しでした。
「ここなら、自分の人生が好転するかもしれない。」
そんな直感が働いたのかもしれません。
回復は一直線ではありません
アステージでの2年間は、決して順風満帆ではありませんでした。
「頑張りたい。」
その気持ちはある。
でも、心が追いつかない。
前へ進みたいのに、感情がついてこない。
毎週お越しいただくゲストスピーカーのお話を聞き、自分の過去と重なって涙が止まらなくなる日もありました。
自分自身と向き合うことは、決して楽ではありません。
何度も立ち止まり、何度も苦しみ、何度も挫折しそうになりました。
それでもAさんは、歩みを止めませんでした。
劇的に変わったわけではありません。
薄紙を一枚一枚はがしていくように、少しずつ、本来の自分らしさを取り戻していったのです。
その変化を支えてくれたのは、スタッフだけではありません。

ともに悩み、ともに笑った仲間たち。
企業LIVE学習会で出会った社会人の皆さま。
「社長のかばん持ち体験」で人生を語ってくださった経営者の皆さま。
毎週お越しくださるゲストスピーカーの皆さま。
社会とのつながりの中で、Aさんは少しずつ、「今の自分も悪くない」と思えるようになっていきました。
そして卒業スピーチでは、
「今の自分が、一番好きです。」
と話してくださいました。
私は、その一言が何より嬉しかったのです。
「啐啄同時」という言葉があります
禅の教えに、「啐啄同時(そったくどうじ)」という言葉があります。
ひなが卵から生まれる時、内側から必死に殻をつつきます。
同時に親鳥も外側から殻をつつきます。
その二つが重なった時、新しい命が誕生します。
私は、この言葉こそ支援の本質だと思っています。
Aさん自身が、「変わりたい」と内側から殻を破ろうと努力した2年間。
そして、その歩みを信じ続けてくださったお母様、ご家族、アステージのスタッフ、仲間たち。
さらに、私たちの学びを支えてくださった地域や企業の皆さまの存在がありました。

「社長のかばん持ち体験」では、株式会社宮田運輸 宮田博文会長、株式会社ダイトー 牧勝之社長、一般社団法人アピアランスケア協会 熊野安芸子理事長、日本ファイナンシャルプランニング株式会社 島木真人支社長に、経営者としてだけでなく、一人の人としての生き方や仕事への向き合い方を教えていただきました。
企業LIVE学習会では、日本ファイナンシャルプランニング株式会社 島木真人支社長に、社会で働くことの意味や、お客様から信頼される人であるために大切なことを学ばせていただきました。
また、ゲストスピーカーとして、一般社団法人アピアランスケア協会 熊野安芸子理事長、「二十四節季の森」「森の美術部」主宰の中谷美樹氏には、それぞれの人生経験や価値観を惜しみなくお話しいただきました。
さらに、株式会社ステップ代表であり吹田市倫理法人会 堤芳亮会長には、Aさんが吹田市倫理法人会のモーニングセミナーへ参加した際、会長として温かく迎え入れてくださいました。
その後もZoomで面談の機会を設けてくださり、Aさんのこれからの人生や働き方について、経営者として、人生の先輩として、多くの温かいアドバイスを届けてくださいました。
また、吹田市倫理法人会の会員の皆さまにも、Aさんへ温かく声をかけていただき、励ましと応援をいただきました。
こうした一つひとつの出会いが、Aさんの人生を少しずつ変え、自分自身を信じる力を育んでくださったのだと思います。
この場をお借りして、心より感謝申し上げます。
卒業生が帰ってきてくれたこと

今回の卒業式で、私にはもう一つ忘れられない出来事がありました。
3月、4月、6月に卒業したT.Tさん、U.Sさん、T.Mさんが、仲間を送り出すために駆けつけてくれたのです。
卒業したにもかかわらず、「おめでとう」を伝えるためだけに帰ってきてくれる。
その姿を見た瞬間、私は胸がいっぱいになり、涙があふれました。
アステージでは、「卒業したら終わり」ではありません。
卒業しても、仲間を応援し、支え合う関係が続いています。
それは、教科書では学べない、人として本当に大切なことだと思います。
私はその光景を見ながら、「アステージで育まれてきたものは間違っていなかった」と心から感じました。

過去ではなく、明日を創る
私は、利用者さんによくこんなお話をします。
「過去がどうであれ、今がどうであれ、明日の自分を創ることが大事。」
そして、もう一つ大切にしている言葉があります。
「過去の自分に縛られず、今の自分にこだわらず、明日の自分へ。明日のステージへ。それが、ASTAGEです。」
卒業とは、人生の終わりではありません。
新しい人生の始まりです。
Aさん、本当にご卒業おめでとうございます。
これから先、嬉しいこともあれば、壁にぶつかることもあるでしょう。
それでも私は、Aさんならきっと大丈夫だと信じています。
あなたはこの2年間で、「自分を信じる力」と「人を頼る力」を身につけました。
それは、これからの人生を支える何より大きな財産です。
そして今、このブログを読んでくださっているご本人やご家族へ。
もし今、先が見えず苦しんでいるとしても、どうか焦らないでください。
人生は、何歳からでもやり直すことができます。
一人で頑張る必要もありません。
あなたの内側から生まれる「変わりたい」という想いと、それを信じて寄り添う誰かの存在が重なったとき、人は必ず前へ進むことができます。
過去がどうであれ、今がどうであれ、明日の自分は今日から創ることができます。
あなたには、まだ見えていない「明日のステージ」があります。
そして、これから先、就職という道を選んでも、就労継続支援A型やB型、就労移行支援など、どのような進路を選んだとしても、私は自信を持って言えることがあります。
アステージで過ごした2年間は、必ず人生の大きな財産になります。
なぜなら、この2年間で身につけるのは、就職するための知識や技術だけではないからです。
自分と向き合う力。
人を信じる力。
助けを求める力。
仲間を応援する力。
そして、自分らしく生きる力。
これらは、どんな進路を歩んだとしても、一生あなたを支え続けてくれる力です。
だから私は、これからも一人ひとりの可能性を信じ続けます。
そして、その「明日のステージ」へ踏み出す一歩を、アステージカレッジはこれからも全力で応援し続けます。


