ひきこもりから社会に出る。いきなり就職じゃなくていい。

― まずは、人と社会につながるところから


「そろそろ働いた方がいいんじゃないか」

「いつになったら就職するんだろう」

ひきこもり状態が長くなると、本人も家族も、どうしても「就職」という言葉を意識するようになります。

もちろん、いつか働きたいと思っている人もいるでしょう。

でも私は、

「社会に出ること」と「就職すること」は、同じではない

と思っています。

長い間、人との関わりが少なかった人にとって、いきなり求人を探し、面接を受け、働き始めることは、とても大きな一歩です。

その前に、もっと小さな一歩があっていいと思います。

家から出る。それだけでも一歩

決まった時間に起きる。

着替える。

家を出る。

電車に乗る。

ASTAGEまで来る。

誰かと同じ場所で過ごす。

挨拶をする。

一緒にご飯を食べる。

人の話を聞く。

自分のことを少し話してみる。

一つひとつを見ると、ごく普通のことに見えるかもしれません。

でも、長い間家で過ごしてきた人にとっては、どれも立派な社会との接点です。

ASTAGEに来たばかりの頃は、半日だけ参加する人もいます。

ほとんど話さない人もいます。

誰かに話しかけられること自体が、しんどい人もいます。

それでいいと思っています。

最初から「できる人」になって来る場所ではないからです。

「話せるようになってから」じゃなくていい

最初は、自分の意見を聞かれても、

「分かりません」

と答える。

あるいは、何も言えないこともあります。

でも、人の話を聞いているうちに、

「自分も少し似ているかもしれない」

と思うことがあります。

誰かが失敗した話をする。

悩んでいたことを話す。

社会人のゲストが、遠回りした経験や、うまくいかなかった話をしてくれる。

そんな時間を何度も過ごしているうちに、

「自分も少し話してみようかな」

という瞬間が出てくることがあります。

最初から会話が得意である必要はありません。

人と一緒にいる時間そのものが、練習になる。

ASTAGEでは、そう考えています。

最初から上手に話せなくてもいい。一緒に何かをしたり、同じ時間を過ごしたりする中で、少しずつ人との関わりが生まれていきます。

社会に出られるようになってから、社会に出るのではない

少し慣れてくると、ASTAGEの外にも出ていきます。

地域へ行く。

会社を見に行く。

経営者や働いている人の話を聞く。

実際の仕事を体験してみる。

もちろん、最初から全部できる人ばかりではありません。

緊張する。

疲れる。

行きたくない日もある。

でも、その経験があるからこそ、

「こういう場所なら大丈夫そう」

「こういう仕事は意外と好きかもしれない」

「人が多い場所は疲れやすいな」

と、自分のことも少しずつ分かってきます。

私は、

社会に出られる状態が完成してから社会と関わるのではなく、
社会と少しずつ関わる中で、社会に出る力を育てていけばいい

と思っています。

社会とのつながりは、就職だけではありません。いろいろな仕事や生き方をしている人と出会うことも、自分の世界を広げる大切な一歩です。

就職だけをゴールにしない

「いつ就職できますか?」

と聞かれることがあります。

でも私は、その前に、

「その人が、今どこにいるのか」

を大切にしたいと思っています。

昨日までほとんど家から出られなかった人が、週に何日か通えるようになった。

人の目を見ることが難しかった人が、挨拶できるようになった。

自分の気持ちを言えなかった人が、

「今日はしんどいです」

「ちょっと相談したいです」

と言えるようになった。

それも、社会で生きていくための大きな変化です。

就職は、その先にある選択肢の一つです。

急がせることで、その人がまた社会から離れてしまうのなら、順番を考えた方がいいこともあります。

だからといって、何もしなくていいということでもありません。

大切なのは、

今の自分にできる、小さな一歩を止めないこと。

だと思っています。

「何をしたいか分からない」からでも始められる

ひきこもり状態にある人の中には、

「働きたいかどうかも分からない」

「やりたいことがない」

という人もいます。

それでも構いません。

やりたいことが決まってから社会に出るのではなく、

人と出会う。

いろいろな場所を見る。

やったことのないことを経験する。

その中で、

「これは嫌じゃない」

「もう一回やってみたい」

「こんな人になれたらいいな」

が見つかることがあります。

人生の答えを決めてから動く必要はありません。

動いたからこそ、見えてくるものがあります。

ASTAGEのモットーは、

「社会に学ぶ、社会の中で学ぶ、社会の一員として学ぶ」

です。

社会に出るというのは、いきなり就職することだけではありません。

家を出る。

人と過ごす。

一緒に笑う。

誰かに頼ってみる。

社会を見に行く。

仕事を体験してみる。

そんな小さな一歩の積み重ねの先に、

「働いてみたい」

が見えてくることもあります。

だから、

ひきこもりから社会に出る。
いきなり就職じゃなくていい。

今いる場所から、一歩ずつでいい。

そして今日よりほんの少し、

「明日をちょっとご機嫌に。」

そんな一日を、一緒につくっていけたらと思っています。

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