「やりたいことが、わからない。」――それって、本当に困ったこと?

「自分が何をしたいのか、分かりません。」

「働きたいとは思うけれど、何が向いているのか分かりません。」

「そもそも、本当に働きたいのかどうかも分かりません。」

アステージカレッジには、そんな思いを抱えて来られる方が少なくありません。

ご家族から、

「そろそろ将来のことを考えてほしい」

「何でもいいから、まず働いてほしい」

と言われて来られる方もいます。

これまで、自分で進路を決めた経験がほとんどない方もいます。

そんな方に、

「将来、何がしたいですか?」

「どんな仕事に就きたいですか?」

と聞いても、答えられないのは、ある意味当然なのかもしれません。

だから私は、

最初から「やりたいこと」がなくてもいいと思っています。

ただし、

「分からないから、何もしなくていい」

とは思っていません。

ここは、少し違います。

「やりたいこと」は、考えているだけでは見つからない

自分に向いている仕事は何だろう。

自分のやりたいことは何だろう。

自分は何のために生きているんだろう。

部屋の中で一生懸命考えていても、なかなか答えは出ません。

なぜなら、

まだ出会っていない自分のことは、自分にも分からないからです。

やってみたことがない。

行ったことがない。

会ったことがない。

失敗したこともない。

誰かと一緒に何かに取り組んだこともない。

それなのに、

「自分には向いていない」

「興味がない」

「できないと思う」

と決めてしまう。

それでは、自分の可能性を知ることはできません。

だからアステージでは、いろいろなことを経験します。

料理をする。

ものをつくる。

人前で話す。

仲間と一緒に出かける。

企業を訪問する。

経営者に会う。

ゲストスピーカーの人生の話を聞く。

自分とはまったく違う価値観を持った人と話す。

その中で、

「これは好きかもしれない。」

「これはやっぱり苦手だな。」

「思っていたより楽しかった。」

「これはもう一度やってみたい。」

「こういう人になりたい。」

そんな小さな発見を重ねていきます。

私は、「やりたいこと」は最初に決めるものではなく、動いた先で見つかることも多いと思っています。

人は、自分でも知らない自分を持っています

アステージでは、これまで本当にいろいろな変化を見てきました。

人前では、どうしてもマスクを外すことができなかった人。

人前で食事をすることができなかった人。

自分の意見を言えなかった人。

感情をうまくコントロールできず、時には物に当たってしまっていた人。

心の底から笑うことができなかった人。

人に会うこと自体を億劫に感じていた人。

そんな人たちが、少しずつ変わっていきました。

いつの間にか、自然な笑顔が増えていた。

ゲストスピーカーが来る日や企業見学を楽しみにするようになった。

「自分で料理を作ってみよう」と挑戦するようになった。

みんなと一緒に行動することを避けていた人が、

「みんなで何かするのも、案外楽しいですね。」

と言うようになった。

そして、変化はもっと身近なところにも表れます。

親への感謝を口にするようになった人がいます。

「優しい言葉をかけたい」と思えるようになった人もいます。

創る学の時間に作品をつくりながら、

「お母さんをイメージして作りました」

と話してくれた人もいます。

就職したわけではありません。

資格を取ったわけでもありません。

でも私は、

こういう変化こそ、とても大きな成長だと思っています。

なぜなら、その人の中に「自分以外の誰か」が入り始めているからです。

「人」と「人間」は、少し違う

私は、「人」と「人間」という言葉について考えることがあります。

人は、一人でも「人」です。

でも「人間」という言葉には、

人と人との「間」

があります。

私たちは、一人だけで生きているわけではありません。

家族がいる。

仲間がいる。

職場の人がいる。

地域の人がいる。

自分とは考え方の違う人もいる。

苦手な人もいる。

そして、人と人との間で、

喜んだり、

傷ついたり、

助けてもらったり、

誰かを助けたりしながら生きています。

だから私は、

「何の仕事が向いているか」

を考えることと同じくらい、

「人と生きるって、どういうことだろう」

と考えることが大切だと思っています。

「自分だけが不幸だ」と思っていた世界から

生きづらさを抱えていると、どうしても自分のことで精いっぱいになります。

「どうして自分だけ、こんなにしんどいんだろう。」

「どうして自分だけ、うまくいかないんだろう。」

そんな気持ちになることもあります。

でも、人と出会うと分かってくることがあります。

いつも明るく見える人にも、苦しかった過去がある。

仕事で成功している人にも、何度も失敗した経験がある。

自分の隣に座っている仲間も、自分とは違う苦しさを抱えている。

ゲストスピーカーの人生に触れ、

仲間の話を聞き、

社会の中でいろいろな人と出会う。

そうすると少しずつ、

「苦しんでいるのは、自分だけじゃなかったんだ。」

と気づくことがあります。

そして、

「この人を応援したい。」

「この人がうまくいったら嬉しい。」

そんな感情が芽生えてくる。

私は、それも社会参加の始まりだと思っています。

応援したくなる人

ここからは、少し厳しい話をします。

親に頼っていれば、今は生活できる。

働かなくても、すぐには困らない。

そういう環境にいると、どうしても「今の自分を変えなければ」という切迫感を持ちにくいことがあります。

私は、無理やり誰かを変えることはできないと思っています。

本人が何も望んでいないのに、

周りが「働きなさい」「変わりなさい」と言い続けても、人はなかなか動きません。

でも、

「本当は働きたい。」

「社会とつながりたい。」

「このままでは嫌だ。」

「うまくできないけれど、何とかしたい。」

「頑張りたいのに、どうしても前へ進めない。」

そんな思いを、たとえ小さくても持っている人が目の前にいたら、

私は、その人を惜しみなく応援したい。

うまくできなくてもいい。

失敗してもいい。

立ち止まってもいい。

でも、

「自分の人生を、少しでも良くしたい。」

その気持ちは持っていてほしいと思っています。

そして、最初はその気持ちすら持てなかったとしても、アステージで人と出会い、いろいろな経験をする中で、

「ちょっとやってみようかな。」

と思えるようになったなら、それも大きな一歩です。

実は、私も50歳を過ぎても分かりませんでした

ここまで書くと、

「山下代表は、昔からやりたいことが明確だったんですね」

と思われるかもしれません。

まったく違います。

私自身、50歳を過ぎても、自分が本当に何をしたいのか分かっていませんでした。

うまくいかない月日を過ごしたことも、何度もあります。

迷いました。

失敗もしました。

遠回りもしました。

ただ、一つだけ、ずっと自分の中にあったものがあります。

「人のお役に立てたら嬉しい。」

「自分がしたことで、誰かが喜んでくれたら嬉しい。」

その気持ちです。

でも、それが何なのかは分かりませんでした。

今のような仕事をすることも、アステージをつくることも、若い頃から思い描いていたわけではありません。

一生懸命生きている中で、いろいろな人と出会いました。

応援してもらいました。

支えてもらいました。

そして、自分でもいろいろなことに挑戦しました。

うまくいったこともあれば、うまくいかなかったこともあります。

その繰り返しの中で、

「自分は、こういうことが好きなんだ。」

「これは苦手なんだ。」

「こういう時に、自分は嬉しいんだ。」

「人が喜んでくれることが、自分の喜びになるんだ。」

と、少しずつ自分のことが分かってきました。

そして、人の人生に触れる中で、自分の人生も見えてきました。

道が見えてから歩き始めたのではありません。

歩いていたら、少しずつ道が見えてきたのです。

「やりたいことがない」のではなく、まだ知らない自分がいる

だから、

「将来やりたいことがありません。」

「何が向いているのか分かりません。」

そう言う人に、私は伝えたい。

今、分からなくても大丈夫です。

でも、分からないからといって、何もしないで答えが現れるのを待つのではなく、

まず、やってみてほしい。

人に会ってみる。

行ったことのない場所へ行ってみる。

誰かの話を聞いてみる。

苦手だと思っていたことにも、少しだけ挑戦してみる。

仲間と何かをやってみる。

失敗してみる。

笑ってみる。

悔しい思いもしてみる。

そして、そのたびに、

「自分は何を感じたんだろう。」

と、自分に問いかけてみる。

「やりたいこと」を探す前に、

自分を知る。

そして、

人を知る。

私は、その先に初めて、

「自分はこう生きてみたい。」

というものが見えてくるのではないかと思っています。

やりたいことが見つかってから、人生が始まるのではありません。

いろいろな人と出会い、いろいろな経験をし、一生懸命生きていく。

その途中で、

自分でも知らなかった自分に出会う。

誰かに応援してもらう。

今度は自分が誰かを応援する。

そして、いつの間にか、

「もう少し、こんなふうに生きてみたい。」

という気持ちが生まれてくる。

私は、それでいいと思っています。

だから、もし今、

「やりたいことが、わからない。」

と思っているなら。

焦って答えを出す必要はありません。

もしかすると、

やりたいことがないのではなく、
まだ出会っていない自分が、たくさんいるだけなのかもしれません。

アステージカレッジは、その「まだ知らない自分」と出会うために、人と出会い、社会と出会い、いろいろなことを経験できる場所でありたいと思っています。

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