― 働き続ける中で、人は少しずつ変わっていく
就職後の定着支援で、ある卒業生の職場を訪問しました。
定期的に本人と職場、それぞれから話を聞いていると、数か月前とはずいぶん話の内容が変わってきたことに気づきます。
以前は、
「次に何をすればいいか分からない」
「準備を忘れてしまう」
「使った物を元の場所へ戻せない」
「分からないときに質問できない」
そんなことが課題として挙がっていました。
ところが今回、職場の方から出てきたのは、
「次は、時間と効率ですね」
という言葉でした。
苦手だった仕事が、「好きになってきた」
本人にも、この1か月でできるようになったことを聞きました。
すると、以前は苦手だった作業について、
「前より速くできるようになった」
と話してくれました。
いくつもの材料をまんべんなく入れる作業。
最初は、どれくらい取ればいいのか分からない。
時間もかかる。
本人にとってはストレスのある仕事でした。
ところが、繰り返し取り組むうちに、
「これくらい取れば、このくらいになる」
という感覚が少しずつ分かってきた。
そして今回、
「嫌ではなくなった。好きになってきた」
という言葉まで出てきました。
私は、この変化がとても印象に残りました。
苦手なことは、最初から「向いていないこと」とは限りません。
経験が足りないだけのこともあります。
繰り返して、失敗して、教えてもらって、またやってみる。
その積み重ねによって、
「苦手」が「できる」に変わり、
「できる」が「ちょっと好きかも」に変わっていく。
そんなこともあるのだと思います。

課題がなくなるのではなく、課題が変わっていく
もちろん、すべてができるようになったわけではありません。
でも、以前課題だった片付けや洗浄、報告・連絡・相談、仕事の準備などは、少しずつ身についてきました。
だからこそ、次の課題が見えてきたのです。
「何をするか」から、
「どうすれば効率よくできるか」へ。
何時までに終えるのか。
次の仕事のために、何を準備しておくのか。
今日のうちに、明日の準備ができないか。
同じ正確さなら、もっと効率のいい方法はないか。
職場が求めることが、一段上がってきました。
そして面白いのは、本人自身からも、
「どういうやり方をすれば早くできるのか、試してみたい」
という言葉が出てきたことです。
職場が期待する「次」と、本人が目指そうとしている「次」が、少しずつ重なってきています。
私は、ここにも成長を感じました。

本人だけが頑張っているわけではない
もう一つ、今回の面談で改めて感じたことがあります。
成長しているのは、本人だけの力ではありません。
職場では、本人専用の作業スペースをつくり、時計や作業表を置き、道具の置き場所も工夫してくださっています。
伝え方についても、一度にたくさん言うのではなく、
「気になったことは1日1つ」
を意識してくださっているそうです。
本人が職場に合わせるだけではない。
職場も、その人が力を発揮できる方法を一緒に考えている。
私は、障がい者雇用では、この両方がとても大切だと思っています。
就職は、ゴールではない
ASTAGEでは、就職したら支援が終わるとは考えていません。
働き始めて初めて見えてくることが、たくさんあるからです。
できなかったことが、できるようになる。
できるようになったから、次の課題が見えてくる。
その課題を一つ越えると、また次が見えてくる。
成長とは、課題がなくなることではなく、
向き合う課題が変わっていくこと
なのかもしれません。
今回、職場の方から、こんな未来の話も出ました。
いつか新しい仲間が入ってきたときには、今度は本人が、その人を支えたり、一緒に仕事を教えたりする側になってほしい。
数か月前には、周りから教えてもらっていた人が、
いつか、誰かを支える人になる。
そんな未来まで職場の方が思い描いてくださっていることを、私はとても嬉しく感じました。
「正確にできる」から、
「正確に、時間を意識してできる」へ。
また一つ、次の目標ができました。
できるようになったら、それで終わりではない。
その先に、また新しい景色が見えてくる。
そして今日よりほんの少し、
「明日をちょっとご機嫌に。」
その積み重ねを、これからも一緒に見守っていきたいと思います。

