― 自立訓練・就労移行・A型・B型の違いを、現場から考える
「本人は働きたいと言っています。だったら就労移行支援でしょうか?」
「A型やB型と、ASTAGEは何が違うんですか?」
見学や相談の中で、こうした質問をいただくことがあります。
障がいや精神疾患があり、「働きたい」と思ったとき、選択肢はいくつもあります。
自立訓練(生活訓練)。
就労移行支援。
就労継続支援A型。
就労継続支援B型。
名前だけを聞いても、初めての方にはなかなか違いが分かりません。
でも、大切なのは、
「どのサービスが一番いいのか」ではなく、
「今、その人には何が必要なのか」
だと私は考えています。
それぞれ、目的が違います
制度上、大まかに整理すると、
**自立訓練(生活訓練)**は、自立した日常生活や社会生活を送るために必要な生活能力の維持・向上などを支援するサービスです。
就労移行支援は、一般企業などへの就職を希望する人に、就労に必要な訓練や職場体験、求職活動などの支援を行います。
就労継続支援A型は、一般企業などで働くことが難しい人のうち、支援があれば雇用契約に基づいて継続的に働くことができる人に、働く機会などを提供します。
就労継続支援B型は、一般企業などでの雇用や、雇用契約に基づく就労が難しい人に、就労や生産活動の機会などを提供するサービスです。
それぞれに役割があり、
「まずB型、次にA型、その次に就労移行、最後に一般就労」
という一本道があるわけではありません。
その人の状態や希望、今必要としている支援によって、選択肢は変わります。
ASTAGEが大切にする「自立」と「自律」
ASTAGEカレッジも、制度上は自立訓練(生活訓練)の事業所です。
ただ、私たちが考える「自立」は、身の回りのことを何でも一人でできるようになることだけではありません。
困ったときに、
「助けてください」
と言える。
分からないときには、人に聞く。
必要なときには、人の力を借りる。
それも大切な「自立」だと思っています。
そして、もう一つ大切にしているのが、**「自律」**です。
自分はどう思うのか。
自分はどうしたいのか。
人の意見を聞いたうえで、自分はどうするのか。
ASTAGEでは、
「あなたはどう思う?」
と問いかけることがよくあります。
最初は、
「分からない」
「どっちでもいい」
でも構いません。
そこから少しずつ、
自分で考える。
自分で選ぶ。
やってみる。
うまくいかなければ、また考える。
人の力も借りながら、自分の頭で考え、自分の人生を自分で選んでいく。
それが、ASTAGEで大切にしている「自立」と「自律」です。

ストレスをなくすのではなく、付き合えるようになる
最近、ASTAGEを卒業していく人たちを見ていて、感じることがあります。
それは、以前に比べて、ストレスに対するハードルが少しずつ下がっているということです。
社会に出れば、自分の思い通りにならないことがあります。
注意される。
指摘される。
自分とは違う意見を言われる。
苦手な人とも関わらなければならない。
自分の気持ちが、うまく伝わらない。
以前なら、注意を受けただけで、
「怒られた」
「否定された」
と感じていた人が、
「これは自分自身を否定されたのではなく、自分の行動について言われているんだ」
と、少しずつ分けて考えられるようになる。
人間関係で嫌なことがあったときも、
「あの人がいるから、もう行きたくない」
だけで終わるのではなく、
「自分は何が嫌だったんだろう」
「どう伝えればよかったんだろう」
「どんな距離なら付き合えるんだろう」
と考えられるようになる。
これは、何でも我慢できる人になるということではありません。
嫌なものは嫌でいい。
しんどいときには、休むことも必要です。
相手や環境に問題があることだってあります。
でも、社会の中からすべてのストレスをなくすことはできません。
だからこそ、
起きたことをどう受け止めるか。
どう向き合うか。
必要なら誰かに相談しながら、次をどう考えるか。
そこが少しずつ変わっていく。
私は、それも社会の中で生きていくための大切な力だと思っています。
「お金に困っているから、B型かA型へ」
相談の中では、こんな話を聞くこともあります。
「お金に困っているので、最低でもB型には行きたい」
「できればA型で収入を得たい」
もちろん、お金は大切です。
自分で働いて収入を得たいと思うことも、とても自然なことです。
ただ、私はそこで一度考えてほしいと思っています。
「収入を得られるか」ということだけで、今の自分に必要な福祉サービスを決めてしまっていいのだろうか。
A型とB型でも仕組みは違います。
A型は雇用契約を結んで働きます。
B型は雇用契約を結ばず、就労や生産活動の機会を通して支援を受ける仕組みです。
だから、
「お金が必要だからB型」
「もっと収入がほしいからA型」
だけではなく、
「今の自分は何につまずいているのか」
「これから、どんな力を身につけたいのか」
まで考えて選んでほしいと思います。
送迎がある。昼食が無料。それも大事。でも……
事業所を探していると、
「送迎があります」
「昼食が無料です」
「交通費を補助します」
といった条件が、選ぶ理由になることもあります。
もちろん、それらを必要としている人もいます。
送迎がなければ通うことが難しい人もいるでしょう。
経済的な負担が少ないことが、継続して通うために大切な人もいます。
ですから、こうしたサービス自体を否定するつもりはありません。
ただ、それだけで事業所を決めてしまうとしたら、少しもったいないと思うのです。
「通いやすい場所」と、
「今の自分に必要な場所」は、必ずしも同じではありません。
福祉サービスを利用することそのものが、人生の目的ではないからです。
送迎があるか。
昼食が出るか。
交通費の補助があるか。
収入につながるか。
それらも大切な選択材料です。
でも、それと同じくらい、
「ここで過ごす時間によって、自分は何を身につけられるのか」
を見てほしいと思っています。
「働きたい」=すぐに就職活動、とは限らない
働きたい気持ちはある。
でも、
人間関係で何度もつまずいてきた。
注意や指摘を受けることが苦手。
困っていても相談できない。
自分の得意・不得意が分からない。
どんな仕事をしたいのか分からない。
そんな状態で就職だけを急いでも、働き始めてから同じところで苦しくなることがあります。
だから私は、
「就職すること」と「働き続けること」は違う
と思っています。
就労を知っているからこそ、その「前」を大切にする
ASTAGEは自立訓練ですが、就労から遠い場所にいるわけではありません。
私たちは、就労移行支援の現場で、障がいのある方の就職を支援してきた経験があります。
また、企業側の障がい者雇用に関する支援にも関わっています。
ASTAGEの利用中にも、企業や職場を訪問する。
実際の仕事を見たり、体験・実習したりする。
そして、就職したら終わりではありません。
実際に働き始めて初めて見えてくることがあります。
仕事の段取り。
人間関係。
質問や相談の仕方。
注意や指摘の受け止め方。
必要に応じて職場を訪問し、本人と企業の双方と話しながら、働き続けるための支援もしていきます。
私たちがその「前」を大切にしているのは、その先の「働く」を見てきたからでもあります。

社会に出る準備を、社会から離れてしない
ASTAGEのモットーは、
「社会に学ぶ、社会の中で学ぶ、社会の一員として学ぶ」
です。
企業を見に行く。
経営者や働く人と出会う。
地域の人と関わる。
実際の仕事を経験してみる。
そこで感じたことを仲間と話す。
うまくいかなければ、一緒に考える。
そして、またやってみる。
人との関わりでモヤモヤすることも、注意されて落ち込むことも、思い通りにならないこともあるでしょう。
でも、その経験があるからこそ、
「次はどうしよう」
を考えることができます。
それもまた、ASTAGEが大切にしている「自立」と「自律」の練習なのだと思います。
「どこに行けばいい?」と迷ったら
最初からサービス名だけで選ばなくてもいいと思います。
まず考えてみてほしいのは、
「今、自分は何に困っているんだろう?」
ということです。
仕事を探すことなのか。
働く経験を積むことなのか。
生活を整えることなのか。
人との関わり方なのか。
注意や指摘を受けたときの向き合い方なのか。
それとも、まだ自分自身のことがよく分からないのか。
そして、もう一つ。
「これから、どんな自分になっていきたいんだろう?」
そこまで考えてみる。
2025年10月からは、本人の希望や就労能力、適性などを整理し、本人がより自分に合った働き方や就労先を選択できるよう支援する**「就労選択支援」**も始まっています。
ASTAGEが目指している、その先
ASTAGEは、
「就職する前に、とりあえず生活を整える場所」
ではありません。
社会に出たあとも、人の力を借りながら、自分で考え、自分で選び、自分の人生を歩いていく。
働くことを望む人には、就職するだけではなく、働き続けていく力を育てていく。
ストレスをなくすのではなく、付き合えるようになる。
人間関係を避けるのではなく、自分なりの距離や関わり方を見つけていく。
注意や指摘を「自分の否定」として終わらせず、必要なものは受け取り、次に生かしていく。
そして、困ったときには誰かの力を借りる。
それも「自立」であり、「自律」だと私は思っています。
「働きたい。でも、どこから始めればいいか分からない。」
そんなときは、まだ答えが決まっていなくても大丈夫です。
まずは、
「今の自分には、何が必要なんだろう?」
そこから一緒に考えていけばいい。
そして今日よりほんの少し、
「明日をちょっとご機嫌に。」
そんな一歩から始めてみてほしいと思っています。

