「働くのが怖い」から、「自分にもできるかもしれない」へ。

「働きたい気持ちはあります。でも、怖いです」

利用者さんと話していると、そんな言葉を聞くことがあります。

働くことそのものが怖いというより、

「また人間関係でうまくいかなかったらどうしよう」

「仕事についていけなかったらどうしよう」

「失敗したらどうしよう」

「朝、ちゃんと起きられるだろうか」

「体力がもつだろうか」

「また体調を崩したらどうしよう」

そんな、いろいろな不安が重なっています。

そして、その根っこにあるのは、

「自分にできるだろうか」という自信のなさ

なのかもしれません。

仕事のスピードに自信がない。

正確にできるか自信がない。

人とうまくやっていけるか自信がない。

過去に仕事でうまくいかなかった経験がある人なら、なおさらです。

一度つまずいた経験があるからこそ、次の一歩が怖くなる。

それは、決して珍しいことではありません。

「早く就職したい」が、いつも正解とは限らない

一方で、

「早く就職したいです」

「いつになったら就職できますか?」

と焦る人もいます。

働きたいという気持ちは、とても大切です。

でもASTAGEでは、その気持ちがあるからといって、すぐに就職を勧めるわけではありません。

場合によっては、

「もう少し待ったほうがいいんじゃないか」

と伝えることもあります。

例えば、昼夜逆転していて生活リズムが整っていない。

精神状態がまだ大きく揺れる。

人とのコミュニケーションが極端に難しい。

仕事の指示を理解することがまだ難しい。

そして、外へ出て活動するための体力がまだ十分についていない。

そんな状態で焦って就職しても、本人が苦しくなってしまう可能性があります。

せっかく「働きたい」と思ったのに、無理をしてまた体調を崩して、

「やっぱり自分には働けない」

と思ってしまったら、あまりにももったいない。

だから、急がないほうがいいときもあります。

8時間働ける体力がないと、就職できないのか?

ここは誤解してほしくないところです。

「体力をつける」と言っても、最初から朝から夕方まで8時間働けるようにならなければいけない、ということではありません。

週5日、フルタイムで働くことだけが「働く」ではありません。

午前中だけ働く。

午後から3時間くらい働く。

週2日から始める。

週3日から始める。

その人に合った働き方があります。

大切なのは、

「今の自分なら、どのくらいできるのか」

を知ることです。

3時間ならできるかもしれない。

週2日なら続けられるかもしれない。

そこから少しずつ時間や日数を増やしていけばいい。

最初から100点の状態で社会に出る必要はありません。

「この人、そろそろいけるかもしれない」

では、私たちはどんなときに、

「この人、そろそろ社会に出ても大丈夫かもしれないな」

と感じるのでしょうか。

私は、資格の数やパソコンのスキルだけを見ているわけではありません。

むしろ、普段の生活の中に出てくる変化を見ています。

例えば、あらかじめ決められた通所日にきちんと来られるようになった。

時間を守れるようになった。

挨拶や返事が自然にできるようになった。

自分が何を苦手としているのか、少しずつ分かってきた。

そして、

「今日はちょっとしんどいです」

「こういう場面が苦手です」

「ここが分かりません」

と、自分の状態を相手に伝えられるようになってきた。

こういう変化は、とても大きいです。

働くための力は、資格やパソコンだけじゃない

就職を考えると、

「どんな資格を取ったらいいですか?」

「パソコンはどこまでできたらいいですか?」

という話になりがちです。

もちろん、仕事によって必要なスキルはあります。

でも私は、その前に身につけてほしい力があります。

あらかじめ決められた出勤日は、できるだけ休まず行くこと。

週2日の仕事なら、その2日。

週3日の仕事なら、その3日。

もちろん、体調が悪くてどうしても休まなければならない日はあります。

でも、

「今日はなんとなく行きたくないな」

という日も含めて、決められた日に行く。

時間を守る。

挨拶と返事をする。

自分のことを知る。

困ったときには、自分の状態を相手に伝える。

分からないことは、分からないと言う。

そして、人からの助言を素直に受け取る。

一つひとつは地味に見えるかもしれません。

でも、働き始めてから本当に自分を支えてくれるのは、こういう力だと思っています。

ASTAGEの2年間でつくりたいのも、そこなんです。

「応援したい」と思ってもらえる人になってほしい

そして、もう一つ。

私がとても大切だと思っていることがあります。

それは、

周りから「この人を応援したい」と思ってもらえる人であること。

仕事をすれば、必ず間違えることがあります。

失敗することもあります。

注意されることもあるでしょう。

そのときに、ごまかしたり、人のせいにしたりするのではなく、

自分の間違いや失敗を素直に認めて、きちんと謝ることができる。

「すみませんでした」

と言える。

そして、分からないことは素直に聞く。

教えてもらったら、一度やってみる。

誰かに何かをしてもらったら、

「ありがとうございます」

と、きちんと感謝を伝える。

失敗しても、また頑張る。

私は、こういうことがとても大事だと思っています。

完璧じゃなくていいんです。

能力が多少足りないことがあっても、

「この人、頑張ってるな」

「もう一回教えてあげよう」

「この人なら応援したいな」

そう思ってもらえる人は、周りの人に助けてもらえます。

仕事は、一人でするものではありません。

だからこそ、人から応援してもらえる素直さは、働き続けるうえで大きな力になると思っています。

自信がついてから働くのではなく、試してみる

「でも、まだ自信がありません」

そう言う利用者さんもいます。

そんなとき私は、まず普段の生活を一緒に見ます。

決めた日に来られているか。

時間を守れているか。

挨拶や返事ができているか。

自分の状態を伝えられているか。

分からないことを聞けているか。

間違えたときに認められるか。

人からの助言を一度受け止めて、やってみることができるか。

そういうことが少しずつできるようになってきたら、次の段階です。

企業での体験や実習に行ってみる。

実際の職場で、自分の今の力を試してみるんです。

実際に行ってみたら、

「思っていたよりできた」

ということもあります。

反対に、

「3時間でも結構疲れるな」

「人が多いところでは緊張するな」

「この仕事は思っていたのと違うな」

と分かることもあります。

それでいいんです。

できたことだけが成功ではありません。

「今の自分には、ここが難しい」と分かることも大切な経験です。

分かったら、またASTAGEに戻って練習すればいい。

そして、もう一度挑戦する。

そうやって少しずつ、自分に合った働き方を探していけばいいと思っています。

「働くのが怖い」と言われたら

もし利用者さんから、

「働くのが怖いです」

「またうまくいかなかったらと思うと、就職する自信がありません」

と言われたら、私はたぶんこう話します。

自信がないなら、いきなり就職しなくてもいい。

まず、今できることを一つずつ増やしていこう。

決めた日に来る。

時間を守る。

挨拶をする。

返事をする。

自分のことを少しずつ知る。

困ったら「困っています」と言う。

分からなかったら聞く。

間違ったら認めて謝る。

何かしてもらったら「ありがとう」と言う。

それができるようになってきたら、企業へ体験や実習に行ってみよう。

そこで、

今の自分がどこまでできるのか、実際に試してみたらいい。

最初から8時間働かなくてもいい。

午前中だけでもいい。

午後から3時間でもいい。

週2日でもいい。

そこから始めればいい。

そして、「何のために働くのか」を考えてみる

ただ、その一方で、私はもう一つ一緒に考えたいことがあります。

「そもそも、何のために働くんやろう?」

ということです。

お金を稼ぐため。

一人暮らしをしたいから。

家族を安心させたいから。

社会とつながっていたいから。

誰かの役に立ちたいから。

自分の力を試したいから。

理由は、人それぞれでいいと思います。

でも、

「周りが働けと言うから」

「年齢的に働かないといけないと思うから」

だけでは、しんどくなったときに踏ん張れないことがあります。

だから、

「自分は、本当に働きたいのか?」

「何のために働きたいのか?」

そこも一緒に考えていきたい。

すぐに答えが出なくても構いません。

いろいろな人に会って、いろいろな仕事を見て、体験していく中で見つかることもあります。

自信は、やる前につくものではない

私は、自信というものは、

「自信がついたから挑戦する」

だけではないと思っています。

むしろ、

やってみた。

ちょっとできた。

失敗した。

教えてもらった。

もう一回やってみた。

今度は少しできた。

誰かに「頑張ってるな」と言ってもらえた。

そういう経験の積み重ねの中で、

「もしかしたら、自分にもできるかもしれない」

という気持ちが生まれてくる。

それが、本当の意味での自信につながっていくのではないでしょうか。

働くことが怖くてもいい。

自信がなくてもいい。

最初から何でもできる必要もありません。

大切なのは、今の自分を知って、今できるところから始めること。

そして、一歩やってみること。

ASTAGEは、その一歩を一緒に考え、一緒に試しながら、

「働くのが怖い」から「自分にもできるかもしれない」へ。

少しずつ進んでいける場所でありたいと思っています。

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